虫歯の治療で、奥歯の詰め物にはアマルガムなどの金属が使われていました。しかし、口を大きく開けた時に銀色の詰め物が見えてしまいます。そこで、現在はセラミックインレーやハイブリッドインレーが使われるようになってきました。
セラミックインレーは、虫歯治療で歯を削った後、型を取り、セラミックの詰め物を作って接着する方法です。セラミックなので天然歯と同じような質感にでき、外見から詰め物をしているとわからないほどです。オールセラミックなので金属アレルギーの心配がありません。
ハイブリッドインレーは、92%のセラミックス微粒子とそれらをつなぐ微量のプラスチックが混ざった素材の詰め物です。セラミックインレーよりも安価で、噛み合わせの相手の歯を傷める心配はありません。ただし、天然歯と同じように年月と共に磨耗していきます。
虫歯治療の際にセラミックインレーやハイブリッドインレーを選択するほか、以前に治療した金属の詰め物を除去して、新たにセラミックインレーやハイブリッドインレーに詰め替える人は大勢います。単に虫歯を治療するだけでなく、仕上がりの美しさを望む人がそれだけ多くなっているということでしょう。
洋服の販売の仕事に従事している30代後半の女性Yさんの場合、奥歯の銀色の詰め物が気になって仕方なかったとか。虫歯治療のついでに、以前の詰め物も取り除いて、すべてセラミックの詰め物に変えました。
「ファッショナブルなお洋服を着ていても、笑った時に銀色の詰め物が見えたらお客様も幻滅していたと思うんです。今は自信をもって接客できるようになりました」
と治療結果に大変満足していただけました。詰め物を変えるだけで、すっきりした口元になった好例でしょう。
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金属アレルギーは、金属イオンが体内のタンパク質と結びついてアレルギー反応が起きると考えられています。アクセサリーや時計などで皮膚炎を発症することが多いですが、歯科治療で使う詰め物や被せ物、人工歯などに用いる金属でも起きる場合があり、年々増える傾向にあります。したがって、金属には強度のメリットがありますが、歯科治療で使わなくなってきています。メタルフリー、ノンメタルといって、金属を使わない治療法が急速に広まっているのです。
そのため、金属を使わないファイバーコアやジルコニアセラミックなど、新しい素材が続々と登場しています。ファイバーコアは虫歯治療で使います。歯髄(神経)を取った歯は、栄養がいかなくなり死んだも同然でもろくなっているので、コアと呼ばれる土台を歯髄があった部分に入れて、補強してから被せ物をします。
従来はコアに金属が使われていました。しかし、金属のコア、メタルコアは、水分で腐食が進むかもしれないリスクがあります。また、メタルタトゥーといって金属イオンが溶け出して歯肉(歯茎)が黒ずんでくる欠点もあります。そのほか、歯よりも金属の方が硬いので、ぶつかった時など金属が壊れず歯が破折してしまう症例がみられました。
そこで、最近はファイバーコアが使われるようになったのです。ファイバーコアとは、グラスファイバー繊維と特殊樹脂を用いた素材で、歯の象牙質と同じくらいの硬さと弾力性があります。金属をまったく使用していないので、腐食や歯肉の黒ずみの心配がありません。また、グラスファイバーに弾力性があるので、歯に負担がかからず破折の危険性が少なくなります。ファイバーコアの上にオールセラミックのクラウンを被せれば、審美的に一番自然に見える仕上がりになります。
ジルコニアはスペースシャトルの断熱保護材に使われた素材で、強度や耐久性に優れ、人工股関節のベアリングに用いるなど体にとてもなじみやすい素材であるジルコニアセラミックのクラウンは、メタルボンドのクラウンと変わらない強度があり、白さはセラミッククラウンと同じです。従来のオールセラミックのクラウンは一つの歯が対象でした。入れ歯でブリッジにする場合、強度の問題でオールセラミックスは無理だったのです。しかし、ジルコニアセラミックスならブリッジにも対応できるようになり、メタルフリーが可能になりました。
このようにメタルフリーと審美性、強度や耐久性などの機能性を兼ね備えた素材の登場で、審美歯科の技術はどんどんレベルアップしています。
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日本人の伝統的な食べ物として、ご飯、味噌汁、魚、野菜のバランスよく摂取でき、咀嚼回数が増えやすい食品が多く使われています。日本人は、大豆製品をはじめ海藻や根歯など多彩な野菜を食べています。こういった食材には咀嚼回数を増やすものがたくさんあります。
それに対して柔らかく、早く食べられるハンバーガーなどのファストフードは咀嚼回数が減少します。
両者の咀嚼回数と食事時間を比較すると、
ご飯食は噛む回数が1019回、食事時間は13分28秒
ファストフードは、噛む回数が562回、食事時間は8分27秒
このことからも、咀嚼回数や食事時間が圧倒的に違っています。
(よく噛む10か条)
1.1回30回ずつ噛んで食べる
2.飲み込もうと思ったら、あと10回噛む
3.食べ物の形がなくなるまで噛む
4.唾液を混ぜておいしさを味わってから飲み込む
5.水分と一緒に流し込まない
6.1回の量を少なくする
7.口に入れたものを飲み込んでから次のものを入れる
8.歯ごたえのある食材を選ぶ
9.一口食べたら箸を置く
10.会話を楽しみながら食べる
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「眼は口ほどにモノを言う」と言われますが、お口の機能に「表情を作る」役割はかなり大きい役を成しています。歯を剥き出しにすれば怒りを。弛めれば喜びを。口角を下げれば悲しみを。
この他に、お口の機能として捕食、咀嚼、嚥下、呼吸、発音がありますが、近年わかった機能にストレス・マネージメントがあります。ストレス・マネージメントとは、人が活動しているとき、すべての刺激は体内にストレス物質を作ります。ヒヤッとする事も、嬉しいプレゼントでも、ストレス物質は作られてしまいます。このストレス物質のリリースに、歯が機能しています。
夜、眠りにつくと、大脳新皮質がクール・ダウンのため動きを弱めます。この時期を、眼球の急速な運動が見られる事から「REM睡眠=ラピッド・アイ・ムーブメント・スリープ」と呼ばれます。同時に歯の接触が起こります。ギリギリと、ある方はギュ~~と、またある人はカチィカチィ。歯の接触でストレス物質をなくしています。
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虫歯は、口の中にいるミュータンス菌が酸を産生し、その酸によって歯が溶けていく病気です。口の中にはたくさんの細菌がいて、ミュータンス菌はその一つです。
ミュータンス菌は食物に含む糖分をエサに、ネバネバ物質であるグルカンを発生させ、歯垢(プラーク)をつくります。歯垢は細菌の住みかとなり、1mgの歯垢に2~3億個もの細菌がいます。そして、歯垢中のミュータンス菌が糖分を分解して酸を発生させ、徐々に歯を溶かしていくのです。
甘いものを食べると虫歯になりやすいのは、ミュータンス菌が糖分の中でも砂糖を好むからです。間食に砂糖を使ったお菓子を食べたり、糖分入りの飲み物を飲んだりすると、ミュータンス菌がどんどん分解して歯の表面を酸で覆ってしまうので、虫歯になりやすくなります。
しかし、虫歯の原因はミュータンス菌と糖分だけではありません。一生懸命に歯磨きしても虫歯になりやすい人がいます。歯は子どもの時にあごの中で形づくられますが、その時の環境などで歯質が左右されるのです。
唾液の作用によっても「虫歯になりやすい、なりにくい」は影響を受けます。虫歯は酸が歯を溶かしていく病気なので、唾液が酸性に傾いている人は虫歯になりやすく、アルカリ性に傾いている人は虫歯になりにくいといえます。ですから、私の医院では患者さんに唾液テストを受けてもらい、虫歯になりやすい体質かどうかを自覚していただくようにしています。
虫歯の原因は「ミュータンス菌」+「糖分」+「歯質」です。どれか一つだけでは虫歯は発生しませんが、結びつくと虫歯になってしまいます。いったん虫歯になれば自然治癒はあり得ません。放っておけば進行するだけです。虫歯は歯を失う二大原因の一つです。歯磨きや定期検診など予防と早期発見が何より大事です。
虫歯は放置しておくとC0からC4へ進行していきます。虫歯の症状はC0~C4と5段階に分類します。Cは英語で虫歯の意味の「Caries」(カリエス)の頭文字です。
・C0 肉眼では虫歯による穴などは見られませんが、歯の表面から無機成分が少し溶け出しているところがあり、初期虫歯の疑いがある場合です。この段階なら、正しい歯磨きなどを実行すれば虫歯にならずにすみます。
・C1 エナメル質の虫歯です。歯の噛み合わせの溝などに発生しますが、痛みの自覚症状はありません。定期検診を受けていればこの段階で発見でき、治療が簡単です。
・C2 虫歯がエナメル質を超えて象牙質まで進んだ状態です。穴があき、黒っぽくなって見た目でもわかります。冷たいもの、熱いもの、酸っぱいもの、甘いものなどが沁みてきます。この段階でも歯髄(神経)に達していないので簡単な治療ですみます。
・C3 虫歯が歯髄まで達し、歯髄炎を起こしています。大きな穴があき、膿が出ることも。絶えず激痛が襲います。放置して痛みが治まることもありますが、それは中の神経が死んで痛みの感覚がなくなるからで、治ったわけではありません。治療に時間がかかります。
・C4 歯冠がほとんどなくなり、歯根だけが残っている状態です。歯髄が腐敗して膿が出て悪臭がします。歯根の先に膿の袋ができる場合もあります。歯槽骨まで溶けて、顔が腫れ熱が出ることも。歯根の状態により、歯を抜くしか治療方法がない場合です。
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